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EST-SNPマーカーの開発

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マツ科針葉樹は林業樹種として世界的にも有用で、森林生態系でも重要な位置を占めます。しかし、ゲノムサイズが大きいため、適応的遺伝子に関する情報は乏しいのが現状です。このような種で適応的遺伝子を探索する方法として、分離集団を作成してQTL解析を行うには労力はかかりますが、有効な手法の一つです。

 最近、RAD-seq(Restriction-site Associated DNA sequencing)という手法を用いて、多数のSNPマーカーを用いることができるようになってきました。RAD-seqは、事前にゲノム情報を必要としないため、非モデル生物の連鎖地図の作成にとても有効です。しかし、ゲノムサイズの大きなマツ科針葉樹では、データの厚みを確保することが難しく、しばしば、ホモとヘテロを区別できないタイピングエラーが生じることが分かってきました。一方で、どんなにゲノムサイズが大きくても、転写され、発現している遺伝子の数は植物であればそれほど変わらないこともわかっています。そこで、私たちのグループでは、大きなゲノムサイズに対抗するために、発現遺伝子にターゲットを絞ることは有効だと思われます。そこで、連鎖地図を強固なものにするに、遺伝子内のSNP (EST-SNP)を用いる予定です。

 これまで、トドマツの標高適応に関連する遺伝基盤を理解するために、高標高×低標高の交雑F1個体同士を交配した分離集団を対象にRAD-seqで1200以上のSNPマーカーを用いた連鎖地図を作成し、フェノロジーや成長に関連するQTLを検出しました(Goto et al. 2018)。現在、親2個体からRNAを採取し、RNA-seqから得られた情報をもとEST-SNPマーカーを開発することを試みているところです。

 なお、本研究は、「先進ゲノム支援」(16H06279)による研究支援を頂きました。