多様性の地理変異
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局所適応を理解するためには、まず、トドマツの遺伝的多様性がどのような地理的変異を示すかを明らかにする必要があります。そこで、トドマツの天然分布域である道内全域にわたるトドマツ天然林集団からDNAサンプルを採取し,EST-SSR遺伝子座(11座)を用いて各集団の遺伝的多様性を調べてみました。遺伝的多様性パラメータを計算した結果,道東および道北の集団では遺伝的多様性が高く,道央から道南にかけて遺伝的多様性が減少する傾向がみられました。とくに,渡島半島に天然分布するトドマツ集団の遺伝的多様性が低い傾向がみられ,当該樹種の分布南限にかけて多様度が低下している可能性が示唆されました。遺伝的多様性が分布限界に近づくにつれて低下する現象は他の樹木集団でも観察されており,トドマツでも同様の結果が得られたと考えられます。また,遺伝的多様性の主軸分析からは道南の3集団(最南端,蛾虫,積丹)および広尾の天然集団の遺伝組成がたの集団と異なることが明らかになりました。これらの集団は祖先集団が異なる系統である可能性も考えられます。