コンテナ苗の生産
コンテナを利用した早出し健全苗の生産
近年、造林の省力化し、通年植栽できることを目的として、コンテナ苗の利用が広がっています。北欧のスウェーデンでコンテナ苗の生産現場を見たのですが、タネの播きつけから梱包までが流れ作業で行われており、その近代的な設備に驚かされました。また、タネをまいてから1年目で山出しが可能ということで、これを北海道の樹種に応用すれば、これまで長期間かかっていた育苗期間を一気に短くできるのではないかと考えました。そこで、私たちは造林が難しいために、資源減少が著しいエゾマツの幼苗育苗とコンテナ苗づくり、その植栽方法の検討に取り組みました。
播種床における幼苗生産では、エゾマツは暗色雪腐れ病、苗立枯病などにかかりやすく、開芽時期が早いために、晩霜害に合いやすいというリスクもあり、その得苗率の低さが事業的な苗木生産を妨げる要因になっていました。そこで、充実種子選別法の開発、春播きによる病害回避、代表的な病害に効く農薬の選別と検証を行い、播種床での幼苗生産の効率化を実現しました。
成長の遅いエゾマツは、種子を播いてから植付けまで6年間もの長い期間がかかり、除草作業など大変な労力を必要とします。そこで、播種床で2年間育てた幼苗をコンテナに移植して、コンテナでさらに2年間育て、播種から4年間で苗木を出荷できる方法を確立しました。コンテナを用いると、病害や気象害に合う危険も小さくなる上に、床替床での除草作業が不要となります。用いるコンテナの種類、さらに成長を促進させるための条件検討、コンテナへの直接播種など、改良すべき点はまだまだありますが、現在の方法では安定したコンテナ苗の生産が可能となりました。
コンテナ苗を実際に植付けた結果、通常の苗(裸苗)に比べて植え付けの効率がよいことが分かりました。しかし、問題は植えたコンテナ苗がきちんと育つかどうかです。このプロジェクトでは、コンテナ苗の育成方法、植栽時期、地がきの強度などを変えて、植栽試験を行いました。植栽からまだ3年しか経過していませんが、今のところコンテナ苗の活着率や初期成長は良好で、順調に生育しています。また、植栽時期を選ばないというコンテナ苗の利点は、エゾマツでも確認することができました。
以上の成果を「エゾマツ早出し健全苗育成のための手引き」として冊子にまとめました。この手引きのPDFは、東京大学リポジトリ<http://hdl.handle.net/2261/55679>からダウンロードできます。
このプロジェクトは、平成22年~25年度の実用技術開発事業(農林水産技術会議)、「北海道固有の森林資源再生を目指したエゾマツ早出し健全苗の生産システムの確立」による研究助成を受けて行われました。